明日の雲ゆき

最近は大河ドラマの感想ばかりです。

麒麟がくる【感想】第19回 信長を暗殺せよ

京に行けばモテモテな十兵衛を狂言回しにして、前回から2年経った世の中を見せるお話でした。

  • 手段を誤った信長、完膚なきまでに母上の愛を失う。家族思いのようでいて、実のところ自分の気持ちにしか関心ないのかも。これで帰蝶とたった二人だけの家族か。でも、いくらなんでもお市の方は出てくるよね。それと、信長の子供達は出てきてほしい。親の愛に飢えていた信長が、自分の子供にどう接するのか気になります。
  • 牢人の十兵衛が何で朝倉の名代になるんだ? またしても都合よすぎじゃないか?と思ったが、藤孝が宜しくお願い〜のお手紙を出していたおかげで、京に知り合い多そう、と思われたからかな。でも正使じゃなく、献上品の鷹が入った箱を担ぐ役のほうがしっくりくるかも。
  • 高政改め義龍、良いところを映像にしてもらえないままナレ死でした。2年前に比べたら憑き物が落ちたようで、余裕があり貫禄がついて大人になったなぁ。十兵衛は牢人暮らしということもあって、まだ青年時代真っ最中って感じ。しかし大きな国を作って美濃を豊かにするのが最終目標だとするなら、十兵衛は義龍に仕えて尾張との外交を頑張る方が、戦もなくなって麒麟が来そうだよ、と思った。三河には菊丸というつてもあるしさ、何かできるんじゃない? って、まあ、それでは史実に合わないですが。
  • 結局、道三がなぜ高政に対してあそこまで冷酷で、大事な話をしてやることもしなかったのか、わからずじまいでした。高政にしてみれば初回の時点からすでに父親から見下されていて、その状況について時折、斜に構えるところを見せつつも、なんとかこらえていました。空気が変わったのは土岐頼芸が高政にいらぬことを吹き込んだ時から。そんなこんなで、二十歳そこそこの青年が反発しない方がおかしい。というか何も反発できないようなら、覇気がなさすぎで、そんなヤツには後継なんて無理な気がしないでもない。
    高政=拗らせ、みたいな話もあるけど、拗らせてるのは道三の方じゃないかな。なぜ道三がそうなったのか、美濃国の来し方などを絡めてちょっとでも描いてくれたら、物語と道三の人物の厚みが増したと思うんですが。ある意味とんでもない毒親で毒殿なのに、なぜか美しく退場してしまってモヤモヤが残ってしまった。
  • 義龍との別れの会話を、十兵衛は物語終盤で思い返したりするといいなぁ。どんな感情を伴って思うのかはわからないけど。
  • 信長、公方さまに謁見して「こいつは使えねぇ……」と思ったに違いない。だが十兵衛は公方さま推しだし、秩序を大事にする人なわけで、すでに現時点で価値観が合ってないのね。

次回は竹千代改め元康が出陣です。ならば、直盛パパは討死で、元康はもう瀬名姫と結婚してるのよね、というところに思いがとんでしまうのは井戸の底の民の性でございましょう。このドラマでの瀬名はどんなキャラになるんでしょうか。瀬名というか築山殿というと悪役だけど、「おんな城主直虎」で最期に石川数正から「御方様ほど美しい方は知らない」と言われ「何を今更」と答えて不敵に微笑むところがかっこよすぎて、私にとっては肝の据わった不器用な美姫のイメージで上書きされております。信長があれだけ斬新かつ説得力のあるキャラになってることだし、瀬名もちょっと期待したい、って、そもそも出番があるのかわからないですけど。

麒麟がくる【感想】第18回 越前へ

サブタイトルは越前だし、朝倉義景が曲者っぽくて好きだなぁ、と思ってたら、またしても織田家に持ってかれたです。

  • 駒ちゃんの命の恩人は、やはり十兵衛の父上でした。明智家に関することは王道を外さないというか、良い感じで予定調和。煕子さまともわりと馴染んでいて良かった。しかし駒ちゃんもいい年の大人になっているはずなのに、いつまであの髪型をしてるんだ?
  • 義景、何考えてるかよくわからん。で、太夫は貴族の出なのか。
  • 信長より恐いのは帰蝶さまでした。政略結婚だけど気の合う夫で良かったな、などど思っていた頃が懐かしい。帰蝶が「弟に会ってみたら?」と焚きつけなければ、信長は信勝を手にかけるところまでは考えてなかったわけで。実家のあれこれと自分のいささか軽はずみな行動が合わさった結果、己の身の内に醸された毒を、織田の家族に注いでいるかのよう。
  • で、帰蝶の毒に簡単に当てられてしまう信長は、やっぱり今も内面はピュアなまま。心の内には、ずっと母上に可愛がられたかった子供が住み続けていました。自分を最優先にしてくれる奥方がいても、これは一生変わらないのか。大人になったら、辛い記憶に折り合いをつけるという生き方もあるけど、信長の並み外れた記憶力はこちらの方面にも影響しているのか。白山の水を飲むよう信勝に迫るところでは、織田家の当主ではなく、弟が妬ましくてたまらなかったお兄ちゃんに戻っているようで、帰蝶と結婚して信長の闇が少しづつ癒されていくどころか、かえって闇があぶり出されるという、救われない展開。信長の残虐行為といわれている様々なことも、夫婦共同でやりそうです。もう絶対に麒麟は来ないわ。
  • 帰蝶の毒と信長の行動力が合わさると最凶。秀吉はこのノリに合わせられそうだけど、十兵衛には厳しそうだ。
  • しかし信勝が見舞いに水を持ってきた時点で、成り行きは察しがつくよね。自分から死亡フラグを運んでこなくてもいいのに……。

十兵衛が先頭になって山中を逃げるところで、主人公っぽくなったな、と思ったが、まだ先は長いようです。次回もお使い人生のようです。
帰蝶さまは駒ちゃんとガールズトークしてた頃には、こんな奥方さまになるとは想像できなかった。可愛らしくて明るい雰囲気の裏にドロドロが潜んでいる、っていうギャップが良いです。元の配役だとはまりすぎて、かえってつまらなかったかもしれない。

麒麟がくる【感想】第17回 長良川の対決

今回も目一杯、高政を擁護しております。
映像は美しく感動的だったのですが、ところどころツッコミ入れたい。まあこれは、野暮な行為なんだと思う。エンターテイメントとして素直に道三のかっこよさや息子との一騎打ちに燃えるのが、正しいのは分かってるけどさ。

  • 娘婿を毒殺し、守護を脅して追い出して美濃を掠め取ったじゃん、道三てば。高政との一騎打ちの口上は、どういうつもりだったのか。わざとダブルスタンダードな言い草で人の業の深さを表現している、というふうに好意的に取ることもできなくはない。けど、目の前に流れる映像に裏読みする余地はなく、潔く強くかっこいいモッくんがいる。確かに映像とルックスにはひれ伏したくなるくらいの説得力がある。でも積み重ねてきたストーリーを思い返すと、引っかかる。ここで一気に冷めてしまった。自分のやってきたことをなかったことにしてる、というか忘れてるかのような主君を「誇り高い」という十兵衛にも力が抜けた。「大きな国は美濃の命運を賭ける価値があった」だったら納得できたかも。
  • そもそもどうして高政という妾腹の子を嫡男にしたのか。正室に、ちょっと不出来とはいえ男子がいたのに。高政が父を嫌うのと、道三が息子を嫌うのと、正室に男子が生まれたのと、どれが一番目なのか分からない。第1回より前だというのは確実ですけど。
    ドラマではそこらへんの経緯は全く出てこないし、第1回から道三は息子を見下してる感があったし、ダメなところがあるとしても嫡男として鍛えようという様子も見えず、なんかこうモヤモヤが収まらない(いっそ十兵衛の方が息子のような扱いをされてる)。
  • 高政の方からしたら、徹底的に父親から嫌われて、でも母親は彼が家督を継ぐことだけが望みの綱で、間に挟まれてさぞ苦しい少年〜青年時代を送ったのだろう、と同情する。せめて母親が愛妾ではなく、きちんと側室の扱いをされてたら、まだ救いがあったかも。
  • それが多少セコケチで品がない父であっても、高政が信頼されてる実感が持てれば、土岐頼芸に取り込まれることはなかったんじゃない? 道三としては高政が頼芸に惑わされていく様子を見てたら、イラつくしムカつくだろうけど、八つ当たりの様に「本当の父は自分だ」と怒鳴ってしまったら、ますます溝は深まるだろうに。それでは自分の思い描く豊かな美濃は、どんどん遠ざかるぞ。もう息子も美濃の未来もどうでもよかったのか?
  • でも、織田家のごたごたを描いた時間は、斎藤家に比べたらずっと少ないのに、見ていてすごく納得できた。小さい信長が母上のために大きな魚を釣ろうとする姿は容易に妄想できる。
  • ともかく初回からあんなに雑に扱ってきた子を最期に「自分の子」と(良い意味でも悪い意味でも)主張するなら、ここに至るまでの間に親としての心理を断片的にでも(というか、はっきり描くのは無粋なので本当に微かでいい)見せて頂きたかった。道三のキャラには、結局最後まで心の綾を感じることはできなかった。最期だけみると、本当は高政から素直に「父上」と呼んで欲しかったのだろうと思えるけど。
  • 妹がいたずらに弟を煽ってきたので国が割れるのを避ける意味もあって(後継が二人立ったら収集つかなくなるでしょう)弟を手にかけ、頭に血が上った父親が戦を仕掛けてきて、幼馴染も敵になり、一人になってしまった高政。と、ここは敢えて高政の側から語ってみる。
  • 道三が感情むき出しで槍を構えて向かってくるのを、表情殺して仁王立ちで待ち構える姿に、高政の全てを背負う覚悟が表れていたと思う。ゆるゆると道三の背後に近づく自軍の兵(いくらか逡巡しているようにも思えた)が元当主を刺せば自分の勝ち、それより先に道三の槍が自分を突けば、自分に従う者はなく周りから当主として認められなかったのだと肚をくくる、みたいな感じ。父を手にかける度胸がないだけなら、兵が道三を囲んだ円の中からさっさと抜ければいいのに、あえて大地に根を張ったようなポーズで待ってる。でも稲葉はなんかやりそう。
  • 史実ではこの後、高政は良く美濃を治めることになるものの、早世します。もし若かりし頃の話どおりに十兵衛が支えてくれたら、尾張とうまいことやっていけたかもなーとか、高政が亡くなってから信長にやられることもなかったかもなーとか、いろいろと妄想がはかどります。
  • 帰蝶さまの言う「愚か者」はこの戦に関わるすべての人のことですが、一番の愚か者は自分だと思っていそうです。思いつきで弟をけしかけなければ、きっと誰も死なずに済んだのだから。
    伊呂波太夫を呼び出した件、父の最期の花道を飾るために帰蝶が兵を送ったのだと(前回では信長が援軍を出しそうになかったから)思ってしまったが、父を逃す段取りのためだったのね。
  • 叔父上は城とともに討ち死を選ばれた。明智家の別れについては、素直に泣けました。領民との繋がりも深く、領地替えを拒否したかった気持ちもわかる。叔父上から十兵衛に渡された水色桔梗の旗は、きっと最後のほうで効いてくるんですね。母上は、もしかしたらあの場に残った方がお幸せだったような気がしないでもないです。で、今回わたし的に一番かっこよかったのは伝吾だ。
  • ただ、高政が攻めてくると言ってるのに、そんなに悠長に話してる余裕はあるのか、とちょっと問い詰めたい。

道三の衣装をまとったモッくんの存在感のすごさに、良くも悪くもいろんなものが引っ張られたんだなぁ思う次第。

麒麟がくる【感想】第16回 大きな国

「夢はでっかく」な父と「足元から一歩づつ」な息子。父のキャラ、インパクトが大きく、確かにクールなダークヒーローですが、どうにも腑に落ちないものが積もりに積もっております。

  • 光安
    領地替えって別に悪い話ではないはずなんですが、「十兵衛に兄から受け継いだものをそのまま渡したい」という思いがものすごく強かったのですね。飼っていた小鳥を逃すときの背中が小さく見えて寂しかった。

  • 帰蝶
    十兵衛が初めて自分の判断で尾張にやって来て、ところどころ狼狽えるような表情を見せたのが印象的でした。弟をけしかけたこと、ほんの少しだけど後悔してる? 信長の方が意外と冷静。
    道三の兵の頭数が足りない分は、伊呂波太夫とお金の力で調達した傭兵でおぎなうのか。

  • 高政
    国衆の領地を異動させて、検地みたいなことをやるというわけね。こちらも落ち着いて見えますし、前回より殿らしくなってる。道三があんなんじゃなければ、意外と信長とうまくやれたかも……なんてことをちらっと思いました。(婿を盛大に持ち上げ、関係がギクシャクしてる嫡男をディスる、自分からわざわざぶち壊しに行ってるようなもんで、本当の切れ者ならやらないでしょう。大きな夢より、目先のつまらない自尊心を満たす方を優先するとは、器量が小さすぎ。)

  • 道三
    どの口が「自分は嘘をつかない」なんてことを言うんだ?
    道三については演出も演技も重々しくて立派なので、つい雰囲気に流されそうになりますが、第1回から振り返ってみると、この人、自分がどれだけのことをやらかしたか、忘れた・分かってない感がすごくて、やっぱり見ててしんどい。
    先代から託されたという大きな国を作る夢、それをきちんと嫡男に継がせることを怠ってきたよね。先代から託された、というくだりもちょっと唐突だったし、息子とうまくいかないことに悩んだりするでもなく、国衆にも大して話さず、自分のやり方(きちんと説明もしないのに)に沿わないやつは愚か者だといわんばかりに見下してきた。夢だけが先走って、足元をおろそかにしてきたのに、此の期に及んで綺麗事を言うのか。いや綺麗事を言わせた方が、手っ取り早くドラマ的に絵になるのは分かるけど、モヤモヤするなぁ。
    ドラマの道三のキャラを踏まえると、夢と現実と自分の愚かさなど全部飲み込んだ上で、それでも最期の意地を通して決戦に臨む、となればグッとくるのであって、唐突に綺麗事を並べられても「すべては自業自得でしょ」としか言えない。
    自分のために死んだ家臣の名が出てこなくなって老いを感じたから、家督を譲ることにした、というのはよい理由付けだと思いました。
    ところで戦国武将が嘘つかない、って立派な事なの? 時代の価値観としては、使えるもんはなんでも使うのもありじゃないの? 高政が土岐家の血筋を名乗る理由を「身を飾るため」と本気で道三が思っているなら、息子を見縊っている証拠だし、また道三自身のコンプレックスの裏返しのようにも思えました。

  • 十兵衛
    初めて自分の意思で尾張に行って、さらには道三につくことを選んだわけですね。無駄な戦をしない国ではなく、大きな国を選んだ。京や堺、尾張に行く機会を与えられたのが大きかったし、大きな国や鉄砲は信長へとつながっていく、ということでしょうか。

  • 今更だけど、道三が十兵衛にしたのと同じように、高政にも外の世界を見聞する機会を与え、対話の機会を持てていたら、こんな壮大な親子喧嘩は起きなかった? って、それでは歴史ドラマにはなりませんがな。
    ただ、ドラマの中で道三が自分の理想をきちんと話したのは十兵衛だけ。評定の場では、気に入らなければ怒鳴ってキレておしまい(って書くとただの老害みたいだな)。息子に対してはその力量を侮り、土岐頼芸にいらぬ事を吹き込まれているのを見ても陰で睨みつけるだけ。その場で何も言わないのは良いけど、お家に帰ったらちょっと息子をシメとこうとは考えなかったのかな。絶対に家督を継がせないと決めているなら、あえて放置でもいいかもしれないけど。
    こんな調子では十兵衛以外の人々は、道三の意に添う対応をとるのは難しいでしょう。十兵衛だけが先見性があったというふうに持って行くための、一種の主人公補正のようにも思えます。

  • ふと思い出したが、真田丸で嫡男・源三郎について「戦には向かないが平時には必要な男だ」みたいなことを言ってた昌幸が慕わしい。昌幸も道三に負けず劣らず無茶苦茶なキャラでしたが、好きだったな。子供たちのことをちゃんと見ていて、戦大好きな己とは反対の素養も認める懐の深さよ。源三郎兄上もかなり父上には振り回されて、気の毒でしたけど。

道三は出家前も坊主の姿もかっこよくて迫力があって、一つの場面だけを切り取って見てるぶんには眼福なんだけど、ふと冷静になって話のつながりなどを考えると、なんか違和感が拭えないのです。
道三への文句をいろいろ並べておりますが、正確にはキャラの好き嫌い以前の問題で、場面ごとのノリ優先で、何かと盛りすぎて変になってる気がする。「西郷どん」の島津斉彬が同じような感じでした。

 

ここから追記
道三退場に向けての番宣を見ました。本編のアゲ具合のさらに増量・道三アゲだな。たぶん最大の人気キャラになったし、番組を盛り上げるために推すのはいい。でもこのドラマが群像劇というなら、人気の出た特定のキャラを、いろいろ盛って持ち上げるのはなんだかなぁ。必要以上にケレン味たっぷりに良く見せようとして、あちこち歪んでませんか。(で、一番割り食ってるのが高政なので、私は高政を推す!)
最期を綺麗事で押し切るなら、その場は一時だけ盛り上がるかもしれないけど、話も人物もかえって薄くならないか?「平清盛」では、健気で無頼な高平太から清盛入道の老害っぷりまでまとめて趣があったのですよね。

 

麒麟がくる【感想】第15回 道三、我が父に非ず

十兵衛が事態の悪化を止めるラストチャンスを持ってきてくれたのに、自分でぶち壊した道三。今や私怨にまみれているのは息子ではなく、父の方です。

  • 孫四郎
    やっと正室腹の男子が出てきたが、守護代の器ではなさそう。理屈は並べていたけど、孫四郎のアドバンテージは母が正室ということだけです。
    高政と違って父上に対しては素直な良い子ですが、本心から父上が好きでそう振る舞っているのか、側室というか愛妾が母である兄上が嫡男ってのが面白くないから父上におもねっているのか、ちょっと迷うところ。ともあれ、さすがに道三も孫四郎を守護代にはできないから、折り合いが悪くても高政を嫡男にしたんでしょうね。

  • 帰蝶
    「父上のことは好きだけど時々嫌い」って話、やっぱり「父上は嫌い」な方が勝っていたんじゃないだろうか。
    同腹の弟・孫四郎をけしかけたのは、美濃国に同盟を反古にさせないため。母上は大切だったようだけど、もうこの世にはいないし、残る父上は嫌いだとしたら、実家の中がどうなろうと構わないと思うかも。
    ただ嫁入りのとき、自身はあまり気が進まず、理由はどうあれ高政も反対していたことについて、どう感じていたのか? 子供の頃から仲が悪かったということはないと思うんですけどね。うっかりな兄上に栗を食べられちゃった件は、日常的にいっしょに遊んだりおやつ食べたりしてないと、あり得ないエピソードだから。
    とにかく今は、信長のためなら、美濃や実家を利用することに躊躇がないみたいです。可愛らしい容貌で暗殺をそそのかすところは、ぞくぞくしました。

  • 高政
    今回のサブタイトルのあれを家臣たちの前で言い切ったのは、高政が本気でそう信じているわけじゃなく(たぶんもう彼にとってはどうでもいいことだと思う)、自分に従う家臣を慮ってのことでしょう。ただの建前でも「殿は父親に謀反を起こすのではない」となれば、家臣たちとしては一応、後ろめたさが軽減され、言い訳が立つ。そうやって戦いに臨む家臣に檄をとばしたわけです。ずっと土岐に振り回されてきた高政が、とうとう逆に土岐を利用したんだと思ったら、ちょっとスッキリしました。
    守護代になって、まずは国内の揉め事を収めるために動いているのが描かれていた(セリフだけだったけど)のは良かった。高政が目指す国造りは、最初の頃からはっきりしていました。確か史実では道三にそっち方面の力がなかったために、国内が荒れてたんですよね。できたらセリフだけじゃなく、映像でもそういった場面が欲しかったな。
    弟を暗殺し父親を討つ、もちろん私怨はあるでしょうが、国が割れるのを避けたい気持ちもあるんじゃないか。稲葉は腹に一物ありそうですが。
    道三が娘婿を暗殺したときは、良心の呵責など一切なかったけど、高政は闇を抱えて残りの人生を送りそうな感じ。弟暗殺の場面、仮病を使い白い床の中で微妙な表情をして横を向いたカットがとても印象に残っています。大嫌いな本当の父親の血が自分にも流れていることを実感している、というふうに思えました。
    で、無駄な戦はしたくない、ってのは十兵衛と共通の価値観だったのにね……。あと、秩序を重んじるところも似てるか。

  • 道三
    高政に家督を譲ったのはヤケクソなの?
    十兵衛が屋敷にやってきて取りなしを頼んだとき、事ここに至ったのは自分が蒔いた種だっていうのに、あらゆる責任を放り出すかのような言い草で開き直りやがったぜ。ぜぇぇーーったい、こんな殿はイヤだ!! ケチくさいとか人使いが荒いとか、そんな欠点など今となっては、可愛らしいもんだ。(回を追うごとに道三が下衆になっていくので、言葉が汚くなっております、すいません。)
    「代替わりしたんだからどうでもいい、勝手にやれ」って、それは国を治める者の言葉じゃない。斎藤さんちの兄弟喧嘩は、家庭内の問題では済まされないことだよ? 面倒くさくなったら、思い通りにできなくなったら、放り出すのか。「尾張と和睦して海を得て、美濃を豊かにする」ってやつは、結局のところ卑しげな征服欲を満たすための話か。本気で美濃国を豊かで良い国にしたいのなら、長期計画は必須だろうに。周囲の反対を押し切って尾張と和睦したくせに、親子喧嘩の果てに責任を投げ出すか。高政が憎いのは仕方ないとしても、美濃の民や国衆はどうなるのか。為政者が偉そうにしても許されるのは、民の命運を背負っているからだ。そんなんだから、家臣は離れていくし息子が息子を殺す事態になるんだわ。

  • 十兵衛
    ただひたすら、かわいそうなくらい斎藤家に振り回されております。こうなると明智家は道三と高政、どちらにもつけないですね。
    本能寺を攻める時、山崎の戦いの時、十兵衛は高政を思い起こすんでしょうか。

世間様では「道三ロス」という言葉があるくらい好かれキャラなのに、私にとってはどうしてこれほどまでに苦手キャラなのか、元々は正統派ヒーローよりクールな悪役が、勝ち戦より負け戦の物語がツボにくるほうなのに、なぜ道三はダメなのか。ぼんやり考えてみた。
たぶんこのドラマの道三は己の毒に無自覚だから、そこにイラっとするんだな。

麒麟がくる【感想】第14回 聖徳寺の会見

斎藤さんちはもう取り返しのつかないレベルで、ぶっ壊れてしまいましたね。第1回から振り返ってみると、やっぱり父上が無自覚でいろいろダメにしてると思う。新し物好きで大した戦略家かもしれないが、国を治める政治家ではないのでしょう。

  • 信長を待っている間の道三の落ち着きのなさが哀れだった。ホント余裕ないんだね。会見の結果によっては信長を殺す肚だというなら、もっとどっしりと構えているでしょうに。土岐頼純を毒殺したときは、表情変えずに淡々としていたから怖かった。国衆と嫡男にそっぽ向かれ追い詰められた状況で、婿殿の人物次第では自分の同志を増やせる、とか思ってない?
  • 道三曰く、深芳野を大事にしていた、というのは嘘ではないだろう。ただし愛妾として。道三と深芳野のいちゃいちゃシーンは、殿と側室というより旦那とお妾。妖しげなライティングで退廃的な雰囲気を漂わせ、睦言は交わしても、いわゆる夫婦の時間なんて感じはない。衣装も浮世離れした派手さで、武将の室というより遊女のようだった。
  • あの時代、奥さんの役割は大きいのに、正室が亡くなってからも妾のままだったら、どれだけ絶望的で寂しかったか。社会から切り離されてたら、そりゃ息子としては「母上はいつも一人」という認識にもなるさ。
  • そんな状況で父と息子の仲はどんどん険悪になっていくし、いくら「高政に家督を譲るつもり」と言ったところで、深芳野にしたら妾の子が本当に後継になれるのか疑心暗鬼にもなるだろう。発言力も後ろ立ても持たない彼女ができることといったら、道三の気持ちを惹きつけておくためにシナを作って、高政には耐えろと言うだけなのかも。
  • 織田さんちのように、すぱっと正室の子の中で一番年上が後継、って決めてしまえばいざこざはなかったのかな。いつ頃から、高政が嫡男となったのでしょうか。道三がそう決めた時は、親子関係は良好であり後継にふさわしい力があると認めていたのか? 道三の独善的な性格からすると、成長した高政が人望を集めるようになるにつれて邪険な扱いをするようになり、高政のほうも父のケチで品のないところばかりが気に触るようになってきた、とか?
  • 正室腹の男子は次回に登場するようですが、どんなキャラなんだろう。稲葉曰く「高政が家督を継げば国衆はまとまる」ということは、高政に人望があるのか、土岐家の血筋が大事なのか、高政なら御しやすいと思われているのか。
  • 深芳野の私室、夜のシーンでは艶やかに見えたのだが、今回はじめて、昼間に映し出された部屋は質素で寂しげだった。
  • やっぱり深芳野のメンタルが完璧に壊れる前に、本心がはっきりわかる描写があったら良かった。ドラマはちょっと唐突だった。これが長良川の戦いの引き金になるのなら、主人公・光秀の運命を左右する重要な事件になるわけだしさ。
  • 帰蝶と信長は協力して戦に勝った。
    例えば道三にも頼れるお方様がいたら、どうなっていたか。光安叔父上が「母には言えないことも奥さんには言える」と言ってたように、自分の思い通りにならない時に愚痴をこぼしたり話をしたりすることによって、冷静になって考えをまとめることができたかもしれない。
  • また、尾張と和議を結ぼうとした時、信長のために派兵しようとした時、「殿のお考えを皆が理解できるよう、心を尽くしてお話しなさいませ」などと、助言したかもしれない。そうしたら「お方様がそう仰せなら」と耳を傾ける者が出たかもしれない。

    今回は感想というより、ただの妄想垂れ流しとなっております。f:id:pululux:20200422145001j:plain


ここ数回だけを見ると、高政が無能に映る展開ですが、長良川の戦いはどう描かれるのでしょうか。道三に感情移入して視聴すると、やっぱり高政はバカ息子なんだろうな。けど個人的に道三みたいな父親や上司は御免被りたいので、どうしても高政の肩を持ちたくなってしまう……。
史実では高政改め義龍は生きている間は、織田から美濃を守ったし、内政にも手腕を発揮しました。ドラマでも、内政については第2回で十兵衛相手に語ってます。若気の至りで頭に血が上ることはあっても、決してバカ息子ではないはず。ここまで誰かを上げるために誰かを落とす、といったような安易な方法をとる脚本ではなかったから、道三退場までにバランスをとってくると思いたいです。
ところでこの先、道三は高政に討たれ、信長は光秀に討たれる。ってことは、どちらも異能の人が普通の人に討たれるってことになるのか。道三にとって信長はお気に入りの婿で、高政と光秀は身分差はあっても気の置けない友達。なんかこう、感慨深いです。

 

麒麟がくる【感想】第13回 帰蝶のはかりごと

なんかあっさりと土岐頼芸が退場しちゃいました。前回で道三が戦だなんだと煽るから、時間をかけるのだと勝手に思い込んでいたんだな。サブタイトルを見れば、どこに重点がおかれているのかはっきりしてましたね。
  • 十兵衛、面と向かって「殿は嫌い」と言ってしまう。で、嫌いだけど敵対できない理由と、戦をして欲しくない理由を順序良く述べます。十兵衛の性格もあるけど、他人だからそういうふうに冷静に話せるんだよ。家族で親子だったら、そう簡単にはいかない。高政が感情的でダメだって意見を見ると、この人はどん底の親子関係というものの「底」の深さを知らずにいられた人なんだろうと思う。
  • 頼芸は可愛がっていた鷹を殺されて、さっさと美濃を出て行ってしまって、道三は高政を「置き去りにされた忠義者」などと煽る。だが、高政はもうお屋形様のご意向など気にする必要がなくなった、変なことを吹き込まれることもなくなった、とも言えるんじゃないのかな。今後は、自分自身がが本当に良いと思うように行動できるってことよ。
  • しかし、母上から一方的に「父上に謝れ」と泣き付かれるのも切ないな。父と息子の仲がぎくしゃくしている(というか、父は息子も家臣もどこか見下しているし、息子は父に対して諦めと鬱憤のせめぎ合い)のは、第1回から続いている。ということは、たぶんずっと不穏な関係だったのに、母上・深芳野が親子の間を取り成すようなことはなかったのだろう。両親から理解されない息子という部分では、高政と信長は同じ境遇だ。
  • 清々しいほど豪胆な帰蝶さまがかっこいい。結婚してみたら夫と気が合って、自分の居場所が確立されて、さらに大殿が亡くなったことでかなりの自由を手に入れたのだと思う。お金の使いどころをしっかり押さえているところをみると、父上は反面教師ということでしょうか。
  • 娘の婿に悪さはしない……ってどの口が言うんだ、道三よ。

f:id:pululux:20200418142214j:plain

今作では「織田信長」は帰蝶と信長の二人で作り上げた武将なんですね。信長としては父上も母上も自分を理解してくれなかったけど、奥さんは最高に分かってくれた。やっと生きてる甲斐がある人生になったんじゃないかな。