明日の雲ゆき

最近は大河ドラマの感想ばかりです。

麒麟がくる【感想】第15回 道三、我が父に非ず

十兵衛が事態の悪化を止めるラストチャンスを持ってきてくれたのに、自分でぶち壊した道三。今や私怨にまみれているのは息子ではなく、父の方です。

  • 孫四郎
    やっと正室腹の男子が出てきたが、守護代の器ではなさそう。理屈は並べていたけど、孫四郎のアドバンテージは母が正室ということだけです。
    高政と違って父上に対しては素直な良い子ですが、本心から父上が好きでそう振る舞っているのか、側室というか愛妾が母である兄上が嫡男ってのが面白くないから父上におもねっているのか、ちょっと迷うところ。ともあれ、さすがに道三も孫四郎を守護代にはできないから、折り合いが悪くても高政を嫡男にしたんでしょうね。

  • 帰蝶
    「父上のことは好きだけど時々嫌い」って話、やっぱり「父上は嫌い」な方が勝っていたんじゃないだろうか。
    同腹の弟・孫四郎をけしかけたのは、美濃国に同盟を反古にさせないため。母上は大切だったようだけど、もうこの世にはいないし、残る父上は嫌いだとしたら、実家の中がどうなろうと構わないと思うかも。
    ただ嫁入りのとき、自身はあまり気が進まず、理由はどうあれ高政も反対していたことについて、どう感じていたのか? 子供の頃から仲が悪かったということはないと思うんですけどね。うっかりな兄上に栗を食べられちゃった件は、日常的にいっしょに遊んだりおやつ食べたりしてないと、あり得ないエピソードだから。
    とにかく今は、信長のためなら、美濃や実家を利用することに躊躇がないみたいです。可愛らしい容貌で暗殺をそそのかすところは、ぞくぞくしました。

  • 高政
    今回のサブタイトルのあれを家臣たちの前で言い切ったのは、高政が本気でそう信じているわけじゃなく(たぶんもう彼にとってはどうでもいいことだと思う)、自分に従う家臣を慮ってのことでしょう。ただの建前でも「殿は父親に謀反を起こすのではない」となれば、家臣たちとしては一応、後ろめたさが軽減され、言い訳が立つ。そうやって戦いに臨む家臣に檄をとばしたわけです。ずっと土岐に振り回されてきた高政が、とうとう逆に土岐を利用したんだと思ったら、ちょっとスッキリしました。
    守護代になって、まずは国内の揉め事を収めるために動いているのが描かれていた(セリフだけだったけど)のは良かった。高政が目指す国造りは、最初の頃からはっきりしていました。確か史実では道三にそっち方面の力がなかったために、国内が荒れてたんですよね。できたらセリフだけじゃなく、映像でもそういった場面が欲しかったな。
    弟を暗殺し父親を討つ、もちろん私怨はあるでしょうが、国が割れるのを避けたい気持ちもあるんじゃないか。稲葉は腹に一物ありそうですが。
    道三が娘婿を暗殺したときは、良心の呵責など一切なかったけど、高政は闇を抱えて残りの人生を送りそうな感じ。弟暗殺の場面、仮病を使い白い床の中で微妙な表情をして横を向いたカットがとても印象に残っています。大嫌いな本当の父親の血が自分にも流れていることを実感している、というふうに思えました。
    で、無駄な戦はしたくない、ってのは十兵衛と共通の価値観だったのにね……。あと、秩序を重んじるところも似てるか。

  • 道三
    高政に家督を譲ったのはヤケクソなの?
    十兵衛が屋敷にやってきて取りなしを頼んだとき、事ここに至ったのは自分が蒔いた種だっていうのに、あらゆる責任を放り出すかのような言い草で開き直りやがったぜ。ぜぇぇーーったい、こんな殿はイヤだ!! ケチくさいとか人使いが荒いとか、そんな欠点など今となっては、可愛らしいもんだ。(回を追うごとに道三が下衆になっていくので、言葉が汚くなっております、すいません。)
    「代替わりしたんだからどうでもいい、勝手にやれ」って、それは国を治める者の言葉じゃない。斎藤さんちの兄弟喧嘩は、家庭内の問題では済まされないことだよ? 面倒くさくなったら、思い通りにできなくなったら、放り出すのか。「尾張と和睦して海を得て、美濃を豊かにする」ってやつは、結局のところ卑しげな征服欲を満たすための話か。本気で美濃国を豊かで良い国にしたいのなら、長期計画は必須だろうに。周囲の反対を押し切って尾張と和睦したくせに、親子喧嘩の果てに責任を投げ出すか。高政が憎いのは仕方ないとしても、美濃の民や国衆はどうなるのか。為政者が偉そうにしても許されるのは、民の命運を背負っているからだ。そんなんだから、家臣は離れていくし息子が息子を殺す事態になるんだわ。

  • 十兵衛
    ただひたすら、かわいそうなくらい斎藤家に振り回されております。こうなると明智家は道三と高政、どちらにもつけないですね。
    本能寺を攻める時、山崎の戦いの時、十兵衛は高政を思い起こすんでしょうか。

世間様では「道三ロス」という言葉があるくらい好かれキャラなのに、私にとってはどうしてこれほどまでに苦手キャラなのか、元々は正統派ヒーローよりクールな悪役が、勝ち戦より負け戦の物語がツボにくるほうなのに、なぜ道三はダメなのか。ぼんやり考えてみた。
たぶんこのドラマの道三は己の毒に無自覚だから、そこにイラっとするんだな。