明日の雲ゆき

最近は大河ドラマの感想ばかりです。

金椛国春秋シリーズ

全10巻の中華ファンタジーです。

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

後宮に星は宿る 金椛国春秋 (角川文庫)

 

 去年の暮れ、セール価格になっていた電子書籍版を1〜9巻までまとめ買い。年明けから手をつけて、読み終わって数日したところで、最終巻となる10巻目が2月に発売されるのを知って、どうせならと1巻から再読し、勢いつけてそのまま最後まで一気に読み切りました。

1巻目のタイトルが「後宮に星は宿る」ということで、後宮の闇を健気に生き抜く繊細な少年の話だろうか、と思って読み始めたら中華風冒険活劇でした。
実は購入ボタンをぽちっとする際に、1巻目のあらすじは確認したけど、2巻以降はネタバレになるからあえて読まず、ほぼ表紙のイラストで購入を決めたのでした。んでも、この短期間に2周したくらいなので、文句なしにおもしろかったです。

主人公は虚弱体質の少年。ちょっと生意気で小賢しい名家のお坊っちゃまというスタート地点から、10巻かけて一人前の青年になっていく過程が描かれています。といっても武力と体力は人並み以下からほとんど上がらない主人公、知力と気力と縁であらゆる困難を切り抜けていきます。知力は最高レベルなのに往々にして脇があまく、全巻で死にそうな場面あり。ついでに後宮生活で身についた女装をする場面もあり。
でも、冒険活劇のお約束として、最終的には主人公やメインキャラは全員めでたしめでたしになるだろうという感触があったので、変な心配はせずに読み進められました。とはいいながら、どうやって窮地を脱するのか、その過程はいつもドキドキハラハラ。先が気になって、なかなか途中でページを閉じることができませんでした。
やんごとなき方から市井の人々まで、善性100%の人もいなければ、完璧な悪役もいない、絶妙な人物の造形と配置も良かったです。

最終巻の10巻ではとりあえず大団円を迎えますが、まだ解決されていない問題が残っていたり、意図が判らない人物がいたりします。っていうか、国家の一大事は全く解決されてない! 外伝が出る予定があるようなので、楽しみはまだまだ続きそうです。

 

 

ここからちょっとネタバレ


主人公の正室はね、彼の身分と立場的にはお姫様か名家のご令嬢が適当なんでしょうけど、そういう女性にはたぶん無理。非力なくせに、何かと地雷原に突っ込んでいく(行かざるを得ない)夫に付き合っていくのは難しそう。だから主人公たちの個人的な思いはもちろんのこと、公にもあのラストが最上だったんじゃないかな。