明日の雲ゆき

最近は大河ドラマの感想ばかりです。

おんな城主直虎/第31回 感想

もう怒涛の展開で、どこから感想を書いたらいいか分かりません。ただ、すごく苦しいストーリーではあるんだけど、あまり悲壮な気持ちにならないのは、井伊の家中がそろって、未来を信じてるからなんだろうな。誰も捨て鉢にならないのは殿の人柄のおかげか、井伊の血筋(最初の頃は散々、脳筋などとディスったが)のせいか。

  • 六左がかっこよかった。徳政令を受け入れて関口様のところから退出してきた直虎を、何も聞かず笑顔で迎えた。いろんな感情や不安を腹に収めて、辛い立場の殿を思いやる。
    虎松のお付きとして出立する姿は、素朴な雰囲気はそのままに凛々しく品もあって、五月人形の金太郎が大人になったらこんな感じかも。
  • 予告で流れた「地獄には俺が行く」って、家臣の咎も全部ひとりで持っていくってことだったのね。血塗れの短刀がとても生々しかった。普通の時代劇だと斬り合いシーンでも、滅多に血が飛び散ることないし。
  • 関口様を前にしての首改めで、偽虎松の首と直虎が対面する場面。直虎の涙の理由を想像すると、とても苦しい。常慶との取引では「民は殺させない」と言ったのに、名もなき子を犠牲にした。そんな汚れ仕事を、自分が知らないうちに政次が引き受けた。亡骸を抱いて泣いてやることも、墓に葬ってやることもできない本当の親に代わって、その生首を抱きしめたようにも思えた。次郎や和尚様の低い読経の声が無力感をさらにかき立てる。
  • 救いは龍雲丸が政次のことをとてもよく理解していること。いつの間にそんなに仲良くなったんだ。身代わりの子供の手配も、龍雲丸が頼まれたのかもしれない。
    このあと立場上、井伊家が政次の名誉回復できなくても、しがらみのない龍雲丸がいつの日か本当のことを噂話として流してくれたりしないかな、などと妄想してみる。

次回予告の「これより小野は井伊家を復興する」
放送開始以来、辛いこと理不尽なことの連続でしたが、ようやくカタルシスを得ることができます。この後、また落とされることはわかっているんですけども。

おんな城主直虎/第30回 感想

本当にこれで直虎と愉快な仲間たちのお話は、終わってしまったのですね。

  • 今回、一番苦しかったのは方久だった気がする。氏真から話を切り出されて、とりあえず受け入れないわけにはいかないよね。自分の商売もあるし、井伊家に奉公する前からの使用人の命と生活だってあるし。おとわの櫛をまだ持っているし、直虎が城までやってきた時の動揺ぶりが滑稽だけど痛々しかった。損得勘定で井伊を切るつもりなら、いつもの方久のようにもっとうまく芝居をするはず。
  • で、そんなこんなで政次と頭に追い詰められて、今川の安堵状を取り上げられ、やけくそ気味に全部白状して、案外ホッと肩の荷を降ろしてたりして。
    三河から人が来ている、という設定で方久を呼び出すに当たって、政次は頭に本当のこと(悪役を演じている意味とか)を話したのだろうか。いい加減な作り話話じゃ頭は動かなそうだし、二人は大した連携ぶりだった。というか、誰かと共同で何かをする政次は初めて見た気がする。
  • 政令の件がここで生きてくるとは。城主となった直虎に虎松の後見を許した日から、寿桂尼はいざという時には切り札として使う心算があったのだろうか。
  • 碁盤の向こうに相手を感じながら、それぞれ一人で井伊の生き残る道について思いを巡らす直虎と政次。この場面にはありきたりの感想文なんかいらない。
    直虎の計画通り、差し出すのは関口の首、だったら主家が変わっても、また愉快な仲間たちの日々が戻ってきたかな。
  • 関口の一行に徳政令は望まないと訴える領民たち。期限が一晩じゃなく、もう少し根回しなどをする時があったら。彼らならきっと、殿の意図をわかってくれた。

次回はもう明日なんですけど、あんまり色々妄想しすぎないで、放送を見たいと思います。

おんな城主直虎/第29回 感想

しのと虎松の回でした。直親にすけこまされ同盟の直虎と張り合う必要がなくなって、しのは憑き物が落ちたように感じました。

  • 直親も先走りして墓穴を掘ったので、大丈夫か直虎と思ってたら、やはりしくじった模様。人質お願いに直虎が対面した時のしのの正論が突き刺さる。つい突っ走ってしまうところは井伊家の血筋なのか。
    すっかりできるお方様になったしのだけど、頭を下げようとする直虎のでこを手のひらでピシッと押し返す仕草はコミカルで、昔の彼女を思い起こさせる。この場面が変に湿っぽくなりすぎなくて、いい感じ。
  • しのが人質にならずに済む方策を考える虎松と、その話に耳を傾ける直虎。お堂の前に座り込む二人は、仕草も表情もなんだか妙に似ていて、親子というより姉弟のように見えた。
  • 本当は嫁ぎたくない、と虎松に語ってみせることが、しのが最後に最愛の息子にしてやれる教育でした。そして、嫁ぐことが直親の志を継ぐことだ、というセリフで涙腺決壊でありました。
  • 徳川が攻めてきたら城は明け渡すが兵は出さない、戦で民百姓を一人たりとも殺させないと言う直虎。出家して竜宮小僧をやって、桶狭間があって、家中に男子がいなくなり、徳政令拒否から新しい産業を興して、龍雲丸と出会って……と、これだけの積み重ねがあるから、綺麗事で言ってるのではない、現実を見据えた目標なのだとわかる。たぶん直虎の性格からして妥協したりはしない。だからその代わりに差し出されるのが政次、とか?

しのとなつ、やっぱり姉妹だったのね、と納得。しのにとっておとわの存在がどれほどプレッシャーだったのか、思い知らされた回でもありました。

 

おんな城主直虎/第28回 感想

デスノートがまさしくデスノートでした。

  • 今回の始まりは、未来への夢と希望が詰まった、新築祝いの場面。ムダに史実をググったりしなければ、陽気な気賀の町衆や中村屋、銭の犬の道を正しく邁進しようとする方久や、穏やかな表情の龍雲丸の様子を堪能できたのにな。
  • 寿桂尼と信玄の交渉シーンは物の怪対決、正統派の大河ドラマのようだった。この信玄に、沸点の低い氏真ぼっちゃんでは相手になるはずもなく。
    しかし、義元が亡くなってから、孫に太守教育を寿桂尼が施すことはなかったのだろうか。あんまりダメだと、自分で動いたほうが早いとか、つい考えたくもなるか。あれほど冷徹な寿桂尼が、孫にはなんとなく甘いところが妙にリアル。
  • 去年の春さんは微妙にポンコツ正室だったけど、今年の春さんはできる女子でした。真摯な言葉を尽くして見事に氏真を立ち直らせた。そして瀕死のばば様のために屋敷中の楽器を集めた宴。
    現実の楽の音と寿桂尼の夢が渾然一体となった映像に亡き義元が。龍王丸と顔を見合わせて笑ってる。無表情な白塗りは外向きの顔だったのね。これなら氏真だって、今川の家を潰したくはないはずだ。
  • と、今川家に色々あってから、直虎に駿府へのお呼びがかかる。今回ばかりは直虎の成長が恨めしい。直親の一件を問われて、もっとアホな回答をしていたら、デスノートの直虎の名に朱墨のバッテンは付かなかったかな。けど彼女がアホな子のままだったら井伊谷は早々に乗っ取られていたかも、なのでどちらにせよ物騒なことになったのかも。
    主家への忠義といえば聞こえはいいが、結局は面倒くさいことにならないイエスマンだけを残すって事は、ジリ貧になるばかりじゃないか。粛清を繰り返す主にまともな人がついてくるはずもなく、見終わって色々考えてたら、寿桂尼の陰に滑稽さと哀しみを思ってしまった。

直虎が綿布の贈り物をし、寿桂尼が「そなたが娘であったら」と言ったあたりは、普通にいい話で終わるかと思いきや、デスノート登場で最高に凄惨な終わりかたでした。義元と同じ仕草で処刑を命じる氏真。あの部屋の床板はどれだけの血を吸い込んでいるのでしょう。

おんな城主直虎/第27回 感想

男が誰もいなくなったマイナス地点から、コツコツ積み上げ、とうとうここまで来ました。もう脳筋一族の影はないどころか、誰の恨みも買わずに(去年の昌幸パパとは違う大事なポイントだと思うの)まんまと城を手に入れるって、真田家より上を行ってるんじゃないか。

  • 方久、有能。策や言葉を操る有能さではなく、人を見る目があるのね。ああいう風に持っていけば関口様が堕ちるとわかっていた。相手を間違うと不興を買うところだ。
  • 今週のクライマックスは、何と言っても「おとわが気賀を取ったぞ」と、鶴が御初代様の井戸の前で亀に報告するところでしょう。戦をしないで、弱小の井伊が消耗することもなく最高の形。ちょっと前の回で政次が「戦はしないに越したことはない」というような意味のことを言ってた……ような記憶が。
    そして、その様子を和尚様だけがこっそり見ていたところまで込みで、涙腺が刺激されました。もうすぐ政次は退場してしまうのでしょうが、井伊谷を守って、精一杯生きた後に親友の亀に会いに行く、と思えば悲しくない、かもしれない。
  • 辛いな、氏真ぼっちゃん、上の世代が偉大だったから。単なるあほボンだったら、あんなに荒れるはずもない。何だか、間の悪い去年の秀次様を思い出してしまった。
    大方様がいなくなった時が腹をくくる時なのかも。
  • 自由という言葉にどこか縛られていた龍雲丸。今回でこの人の初登場からの心情が腑に落ちました。
  • ピカピカ新築の湖上のお城。開放感があって、真新しい木の香りが漂ってきそう。

次回の「死の帳面」て、誰が誰のことをデスノートに書くのでしょうか。

 

 

おんな城主直虎/第26回 感想

井伊家と家臣団はなんだかんだあっても、みんな揃って同じ方向見ているし、殿のために骨身を惜しまない、という感じになって何週も経ちました。最近この安定感みたいなものに慣らされて、見終わった後に書かずにいられない衝動性が不足中です。でもその分、もうすぐやってくる『その時』が重く感じられるんだろうな。

  • 龍雲丸の思考がお家再興にいかないのは、なぜなのか。城なんかがあるからダメなんだという理屈、分からなくもないけど、何か足りない気もする。武士になるかどうかは別としても、城と運命を共にしたらしい父上について、どう思っていたのか。脇役だし、これ以上掘り下げられることはないのかな。
  • 政次の「お前はどこの領主だ」や打掛の裾を踏んづけて転ばせるところや、直虎の踏まれた打掛を脱ぎ捨てて去ろうとするも、わざわざ引き返し「お下知には背かぬ」と言うところ。人前なのに、すっかりおとわと鶴になってる。もう今更ホントのところをばらしても、誰も驚かない気がする。
    直接自分とこには関係ないけど走り回る直虎は、竜宮小僧の次郎法師を見るようだった。
  • 中村与太夫はじめ気賀の町衆、仲間割れ展開になるとは。どちらの派閥からも仲間はずれの中村屋さんが、何かかわいい。
    直虎が双方をどうにかまとめたが、城主になる大沢様と上手いこと交渉できるのだろうか。そもそも商人が好き勝手やってるから城を作る話になったのに。と、思ってたら方久がとんでもないことを言い出した。
  • 高瀬には聞かせられない庵原様のくせって何なのさ?

予告の荒れ狂った氏真ぼっちゃまが、もしかしたら武田より恐いです。

おんな城主直虎/第25回 感想

恋愛、忠義、家族愛、友情といった単純な言葉では言い尽くせない、いろんな思いが織り合わさった回でした。井伊の家中、劇中時間ではしばらくぶりの龍雲党まで、みんな同じ方向を見ている。

  • お寺で子供たちを相手にしている政次は見ていてホッとする。子供の世代はもう小野の家に関して、引っかかりなどないのかも。そして、ちっこいくせに井伊の赤鬼の片鱗を見せる虎松。
  • なつ、内緒話をするためとはいえ思い切った行動に。心情としては家族愛と恋愛、五分五分くらいなのかな。政次も察しているはず。しかし、これってある意味、政次スケコマシと言えるんじゃないかと。直親みたく、分かりやすくあからさまでないだけで。
  • 俺の手は冷たかろう……は不憫の象徴じゃなく、ほのぼのとドキドキと切なさが合わさったシーンでよかった。
  • ここで主人公がどうにかなるはずがないと分かってるから落ち着いて楽しんでますが、謀反・駿府・申し開きはこれまでの井伊家にとって破滅への3点セット。
    最初の直親パパからのあれこれに始まって、過去の数々の失敗を乗り越え、井伊家と直虎は最悪の事態をひっくり返せるところまでたどり着いたと思うと感慨深い。
  • 氏真坊ちゃん、蹴鞠勝負のことを未だに根に持ってるらしい。でももうイノシシ少女のおとわはいないのだよ。若手の当主としては直虎の方が一段上でしょうか。

次回も中村与太夫の登場があるようで嬉しい。気賀の他の商人たちも、中の人も含めてひと癖ありそうな人々で、とても楽しみです。