明日の雲ゆき

最近は大河ドラマの感想ばかりです。

おんな城主直虎/第50回 感想

終わってしまいました。
たくさんのエピソードを丹念に拾った展開で心残りなく、清々しく終わりました。1回も欠かさず見続けて、本当に良かった。

  • 自然に関する於大の方と直虎のやりとりに50回全てが凝縮されていた。最初はまず、虎松の身代わりになった名も知れぬ病気の子が思い出されたが、その子だけでなく敵も味方も含めて全ての命の話だった。お家のためという言葉は、肝の据わった大人の判断のようにも聞こえるが、逆から見れば思考停止のようにも思える。答えは一つではない、っていういつかのセリフを思い出した。
    たった一人の幼子の命を助けることが大河の主人公のエンディングって、他の大河と比べると確かにスケールは小さい。天下統一やら大大名に出世やらに比べたら、ゴマ粒のよう。けど全ては諦めずに一歩を踏み出すことから始まる。これまでの直虎と井伊の歩んできた道のりを見てきた者にとっては、決してありがちな綺麗事の場面ではなくカタルシスを感じる場面だった。(ついでに「子のいない人にはわからないでしょう」「子がないから、どの子も我が子と同じ」は大河だけのことではなくドラマとして一歩踏み出した。)
    於大の方も本心から自然を葬りたいわけではないから、ほっとしたよね。
    「若はどうやって生き延びられた、答えよ」と万千代の眉間に向けて弓矢を構えた傑山さんは、今までで一番迫力がありました。
    そして、なんとなく宙ぶらりんだった之の字&六左の褒美の茶碗が、すごい役に立った! 自然くんを信長の遺児にでっち上げるための偽の証拠として、件の茶碗が織田の追っ手に示された。自分が半ば気まぐれで褒美に与えた茶碗が、巡り巡ってモラハラしてた家臣の息子を救ったという結末
    に、信長はどんな顔をしてるんだろう。あの世で光秀と腹を割って話せてるといいな。
  • 高瀬については、近藤殿が一枚上手だった。いつから井伊の娘だって気がついてたのか問い詰めたいぞ。
  • 御初代様の井戸はあの世とこの世をつなぐ道で、これを通るには子供の姿の竜宮小僧になる必要があるのかも。
  • おとわを迎えに来た鶴と亀が、わだかまりとか一切感じさせず本当に自然に同じ画面に収まっていたところで涙腺決壊しました。そして子どもの姿の龍雲丸も現れて「一緒に連れて行ってくれ」と……そういうことか……。
  • 龍雲丸がずっと持ってた赤い水筒と、堺で餞別としておとわが渡した青い水筒が壊れた船とともに砂浜に打ち上げられている風景だけが映る。二人とも互いに先には死なないという約束を守り通した。
  • 昊天傑山の途切れ途切れのお経、葬式に出ず一人呟く和尚様、黄金色に輝く田を行く葬列と付き添う民、徳川の陣に殿の訃報が届いた時の涙雨。これらの風景を思い返すと悲しいけれど、どこか心洗われる思いがする。それはおとわが自分の命を使い切ったからなのだろう。
  • 和尚様から井伊の魂として白い碁石を受け取った万千代、そして万福と之の字に六左は北条との和睦をまとめるため、国衆の証文を集める旅へ。万福があまりにも爽やかに政次の磔を交渉のネタに使うので、泣きながら笑ってしまった。
  • 直虎が城主になった時、怪しげな商人として現れた方久が祝いの品として持ってきた硯。方久がそれを直虎の形見として万千代に届ける。ここで出てくるなんて思いもしなかった。また泣いてしまうじゃないか……。
  • 北条との和睦成立を祝う宴会。年齢や立場が上の方々がノリノリの宴会芸で盛り上げる。豆狸の家康、はまりすぎ。氏真ぼっちゃんが派手な衣装で歌い踊るの見てたら、桶狭間の後に今川館で捨てばち気味で踊り狂ってたぼっちゃんを思い出した。赤烏帽子はあの時と同じもの? 今の氏真は心の底から楽しげにサービス精神満点で踊り、万千代の元服したいという願いに、誰よりも先に「心得た!」と声を上げる。一応他所のお宅のことだろうに、あんたにそういう権限があるのか、とツッコミ入れたいが、まあいいか(笑)。氏真からすれば井伊家は裏切り者だったわけですが、そのあたりのわだかまりは消えたのね。ぼっちゃん、尊い
  • 直政の名の由来は想像通りでしたが、登場人物がほぼ揃った場で家康の口から語られたことに胸熱。公に政次と小野家の名誉が回復された瞬間。
    あとはもう親戚のおばちゃんの気持ちで見ておりました。あの弱虫だった虎松が、暴言吐いては万福に布団蒸しされてた万千代がこんなに立派になって、と。
  • 直政が家康と碁を打っている場面。亡き殿に言われた通り、信康の現し身として仕えているんだね。
  • と、思ったのもつかの間、陣中で赤備えの武者に軽く見られたことに憤って、一番槍になろうと馬を駆る。って、それ大将が戦場でやったら一番あかんヤツじゃ……。榊原様の冷ややかな目が容易に妄想できるぞ。単純にカッコよく終わらないところが、この物語の直政らしい。
  • 最後は陽の当たる場所に置かれた碁盤に「完」の形に並んだ碁石、手元と声だけで誰か分かる演出。地獄でも極楽でもないあちらの世の平和な井伊谷で、政次と直虎のささやかな約束が果たされ、側で直親も見ている。アップになった殿の無邪気なドヤ顔は「どうじゃ、やってみなければわからぬであろう?」という感じでしょうか。
    龍雲丸は明るいうちは龍雲党の仲間と過ごして、日が落ちる頃に帰ってくるんだ、きっと。気賀に立てられた手書きののぼり旗「井伊にて待つ」もあちらの世で現実に、と勝手に妄想。

柴咲コウさんについてはこれまでほとんど出演された作品を見たことがなく、なんとなく美人女優という認識しかありませんでした。が、殿が柴咲さんで良かった。お茶目で無鉄砲なイノシシで、思い切りがよくて度胸もあって、でも本質は女の子で、男女どちかららも慕われる、そんな殿は柴咲さんが演じられてこそ成り立つキャラクターだったと思います。尼頭巾の下の力強い目が本当に好きです。

このキャストで続きが見たい。けど、殿の物語には綺麗にエンドマークがつけられたので、不粋な気もします。続きは、どこかの乙女ゲーじゃないが、あなたの心の中で……が、いいのかも。続きというか、朝ドラのスピンオフのようなお話が見たい!