明日の雲ゆき

最近は大河ドラマの感想ばかりです。

おんな城主直虎/第45回 感想

「答えを選ばれよ」
寿桂尼の抑制のきいた声で、このセリフがずっと頭の中を巡っています。

この回だけ見れば、直虎も万千代もただの傍観者でしかない。でも、視聴者は10ヶ月間、良い時も辛い時も共に歩んできた直虎の目を通し、彼女の経験を踏まえた上で、全ての場面を見ていたはず。だから主人公は紛れもなく直虎です。

そこにあるのは徳川家の悲劇。死んだ目をした家康、全てを悟った若殿と「代わりに自分の首を」と訴える家臣たちを見ながら、頭の中をよぎるのは駿府へ申し開きに行く途中で討たれた直親や、虎松の命と引き換えに戦に駆り出された大じじ様や先代の中野殿、代わり自分の首を差し出すと言った新野殿(確か氏真ぼっちゃんに却下された)。そして闇夜に沈む今川館で声を殺して泣いていた政次。あの時の幼馴染3人組は、現時点の信康や万千代と近い年頃でした。

  • 立派な若殿に、ほんの少しの狡賢さがあったら。適当にボンクラを装って信長に取り入るフリでもできたら、生き残れたのだろうか、信康は。
    家康が今川から離れてからずっと辛い立場にいながら、こんなに聡明で素直な息子に育て上げた瀬名様を思うと泣けてくる。
  • 酒井忠次の心中が今ひとつ掴みきれない。信長の圧力と言葉の誘導で、信康を切る約束をさせられてしまった。最初から望んだわけじゃないけど、こうなってしまったら憎い今川の血を排除する絶好の機会に、とか、ちらっと考えてそう。
    堀川城の虐殺も、殿ができないことを代わりにやったということだったし、あれもこれも確かにお家のために必要なことだったかもしれない。でも殿のために悪役になり切る覚悟があるようにも思えない。堀川城の時は開き直った感じだったが、今回はかわいそうなくらい揺らいでいて、人間らしいとも言えますが。なんていうか、徳川四天王といわれる割に小物っぽい。
  • 信康が捕らえられるところに直虎と万千代が居合わせる。井伊家中の多くの人々、和尚様、そして名もなき重病の子のおかげで生き残り、殿に言いたいことが言える奇跡の意味を万千代は理解しただろうか。
  • 氏真ぼっちゃん、家康の要請で信康救済に立ち上がる。さすがは太守様……なんだけど昔は信長と似たような事、やってたよね。政次を見殺しにした家康が、今度は助けを求めるのと対になっているようだ。

どんな汚い手を使ってでも、自分の代で戦国の世を終わらせようとする家康が想像できる回でした。